長年にわたり中断したり着工できないままでいる公共事業を見直す「時のアセスメント」が国政レベルでも動き始めた。この夏、政府与党が島根県の中海干拓など二三三事業の中止を勧告したのは記憶に新しい。「現象的には同じでも、狙いとするところは似て非なるもの」 時のアセスの生みの親といわれる北海道庁総合企画部長の磯田憲一は、国の動きを冷ややかに評価する。「時のアセスメント」という言葉は、作家・倉本聰によるものだ。富良野市に居を構え、環境問題にも取り組む倉本に、「時代の変化を踏まえて公共事業を評価し直すような仕組みを作りたい」と磯田が打ち明けたとき、「ほぉ、『時』のアセスメントというわけですね」と受けて言葉が誕生した。九七年一月、北海道庁の仕事始めで知事の堀達也が職員への新年挨拶で初めてこの言葉を使い、一挙に注目が集まった。 時のアセスは、自治体が行う事業が妥当なものであるかどうかを自治体や第三者が検証する「政策評価」の一手法で、それ自体は珍しいものではない。アメリカでは七〇年代から、国内でも三重県が九五年度からいち早く導入している。だが、それでもあえて磯田をパイオニアとする理由は、地域経済の公共事業への依存度が極めて高い北海道で時のアセスを導入した点にある。国の開発予算の一割が投じられ、道内需要の二六%が公的部門の支出(公共事業)で占められている自治体で公共事業を見直そうというのである。

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