島は海に囲まれ、外部からの余計な影響から遮断されているから、巨大な実験室になり得る。自然保護、化石燃料の追放、廃棄物の再利用などにより資源循環型の「エコ社会」がどこまで実現できるか――。屋久島ではいま全島挙げての実験が進んでいる。 この屋久島で最近、嬉しい異変が起きた。鹿児島県はもちろん日本全国の離島では過疎が進み、人口減に悩んでいるというのに、人口が増え始めたのである。屋久島には上屋久町、屋久町の二つの町があり、上屋久町の人口は微増。屋久町でははっきりとした増勢に転じた。屋久町は平成八年末、六千四百人だった人口を平成十七年度に七千人にする十年計画を立てていたが、今年の十月初めに早々とその目標を達成してしまったのだ。 町長の日高十七郎氏は、「計画を作成していた平成六年頃、事務局が六千八百人という目標を上げてきたのですが、四捨五入して七千人にしてしまえとハッパをかけたのです。それがこんなに早く実現してしまうなんて」と嬉しい誤算に表情を崩している。 増加の主役はUターン組やIターン組である。Iターン組は第二の人生を屋久島で送ろうという中高年者や山が好きだという若者で占められている。七千人目の人を表彰しようということになった。きっと赤ちゃんだろうと思っていたのが、役場でくす玉を割ったのは鹿児島市で看護婦をしていたUターン女性だったそうだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。