連鎖する企業再編

執筆者:2000年11月号

商社、化学、鉄鋼――。相次ぐ事業統合、合併の波が押し寄せる 二十一世紀を目前に控え、産業界で事業統合や持ち株会社方式による経営統合など、大型の企業再編が加速してきた。一九九〇年代は、多額の不良債権の処理を迫られた金融機関が生き残りをかけ統合、合併を繰り返してきたが、ここに来て再編の波が産業界に急速に広がっている。企業系列など日本独特の産業界の慣行やもたれ合い体質もようやく崩れ始め、世紀末の日本企業は、国内市場だけでなく国際市場を見据えた新世紀を迎えるための新しい経営モデルを模索し始めたように見える。 十月十八日。昼下がりで人影もまばらな都内のあるホテルの一室で、総合商社のトップ二人が密かに会合した。一人は伊蔵忠商事の丹羽宇一郎社長、もう一人は丸紅の辻亨社長である。二人は社長に就任してから、貿易業界のパーティーなどでは顔を合わせることはあっても、二人だけで会談するのは初めてだった。会談の目的は今年七月から事務局が水面下で進めてきた、両社の鉄鋼部門の事業統合である。「来年秋をめどに共同出資で新会社を設け、それぞれの商権と社員を全面的に移管しよう」。商社業界では劇的な、大手商社による事業統合がここで約束された。

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