政府・司法制度改革審議会は十一月二十日に「中間報告」を発表、国民の裁判への直接参加やロースクール(法科大学院)設置などを提言する予定だ。約四十年ぶりに大きく盛り上がった司法改革論議だが、この「中間報告」からすっぽり抜け落ちた論点がある。刑事司法の要ともいうべき地検特別捜査部、いわゆる「特捜」問題である。 特捜部は大阪地検、名古屋地検にもあるが、何といっても花形は東京地検特捜部。全国約千三百人の検察官(検事)のうち、籍を置けるのは約四十人だけという少数精鋭主義だ。犯罪捜査は通常、警察が捜査し、検察官が起訴、不起訴を決めるという流れだ。しかし例外が検察官の「独自捜査」で、「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる」と規定する刑事訴訟法がその根拠になっている。東京地検特捜部などは、いわば犯罪捜査の例外的組織で、エリート特殊部隊というわけだ。“非合法的”な捜査 巨悪を眠らせない、著名政治家、高級官僚の首をとる、大企業の反社会的行為を許さない――。特捜部への一般的なイメージは、過去の摘発事例を通じて作られてきた。田中元総理の逮捕に至ったロッキード事件以後、リクルート事件では同社創業者の江副浩正、日本電信電話(NTT)元会長の真藤恒らを逮捕。共和汚職事件では元北海道開発庁長官阿部文男を逮捕、ゼネコン事件では元自民党副総裁金丸信を逮捕。九七年以降は銀行、証券業界の総会屋への利益供与事件を摘発、野村證券などの経営陣刷新につながった。また九八年には大蔵省、日本銀行への接待汚職にも捜査の手を伸ばし、キャリア官僚の逮捕にも及んだ。

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