日本の国防計画の指針である中期防衛力整備計画が来年度から更新される。IT革命、ゲリラ・特殊部隊など時代を反映した言葉が並ぶ中で、意外な印象を与えるのは「生物兵器」の文字。続いて「対処能力の向上が必要」とある。実はこの文言、防衛庁を訪れたコーエン米国防長官が「次の脅威は生物兵器」と伝えたことから急遽、中期防に盛り込まれ、早速、防衛庁は「生物化学兵器への対処に関する懇談会」を設置した。 防衛庁幹部は「米政府が注目しているのは北朝鮮。炭疽菌など生物兵器の生産能力を持つと分析しており、化学兵器とあわせて百六十発の弾頭を持っているとの推測もある。これを開発中のテポドン2号に搭載して米本土に向けて発射するというのが最悪のシナリオ」と解説する。 生物兵器は使う側も感染する恐れがあり、陸上自衛隊は研究対象としてこなかったが、次期中期防では化学防護隊に新たに生物兵器対処の専門部隊を編成することにしている。 陸自関係者は「オウム真理教がザイールからエボラウイルスを入手しようと試みたように、生物兵器はテロ組織にも悪用される可能性がある。背景に冷戦終結によるNBC(核・生物・化学)兵器の拡散がある」と語る。

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