5000万世帯

執筆者:伊藤洋一2000年12月号

 人口の増減も重要だが、経済を見る視点から言うと「世帯」の数というのも非常に重要な数字である。「一家に一台」というようなモノの数は、世帯数の増加に従って伸びる。冷蔵庫や洗濯機など、大型家電製品の販売量数には世帯数に比例するものが多い。 現在、日本の人口は一億二六〇〇万人で、世帯数は四六〇〇万。日本の世帯数は、人口の伸び以上に伸びてきた。一九五〇年には人口八〇〇〇万人強に対して世帯数一七〇〇万弱。つまり、人口は倍増していなくても、世帯数は二・五倍以上となっているのだ。終戦直後の日本の一世帯当たり人数は、今では想像もできないくらいに多かった。地方では十人などというのも珍しくはなかった。それが核家族化、一人世帯の増加などで世帯数は大幅に増え、民需の強さにつながり経済発展の原動力になったのである。 日本の人口は、労働人口において二〇〇五年、総人口は二〇〇七年に頭打ちになる。世帯数のピークはそのしばらく先、二〇一〇年から一五年にかけてで、ピーク時の世帯数は五〇〇〇万と見られている。主に一人世帯の増加がまだ続くため、人口の伸びが止まった後も、世帯数はしばらく増え続ける見通しなのだ。 人口の伸びが止まっても、しばらく世帯数が伸びるということは、日本経済がその面から急速に成長のモメンタムを失うことはないということを示している。しかし二〇一五年を過ぎれば人口、世帯ともに減少に転じる。人口が減り、世帯も減る時の成長力の維持は難しい。鍵は「生産性の向上」だが、タイムリミットはあと十年といったところだろうか。

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