「味の素」のインドネシア現地合弁会社がイスラム教で食べることを禁じられている豚肉の成分を調味料製造過程で使用したとしてヤリ玉に上げられた事件の“仕掛人”は、スハルト元大統領一族につながる守旧勢力との説が有力である。 ジャカルタの複数の消息筋によれば、元大統領派の一部国軍将校とスハルト一族に近いイスラム団体幹部が昨年暮れに同市内の軍施設内で秘密会合を開いた。同会合では、インドネシア各地の分離・独立運動激化や国民の経済に対する不満の高まりなどから、ワヒド政権の崩壊は近いとの判断が示され、打倒戦術の一環として政治的、社会的混乱を引き起こすためのいくつかのプランが作成されたという。 味の素事件はその一つで、こうしたスハルト派の意向を受け、元大統領一族と結び付きの強い人物の経営する化学調味料会社が、イスラム原理主義派と一緒に仕組んだものだという。この会社は味の素とは競合関係にあるため、直接的な利益に与ることも事件を企図した理由とみられる。昨年暮れ、ジャカルタでは連続爆弾テロ事件も起こっているが、これもワヒド政権の揺さぶりを狙ったスハルト派守旧勢力の仕業との説が濃厚になっている。

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