外務省の東郷和彦欧亜局長がオランダ大使に転出する人事が内定した。北方領土交渉で対露戦略を組み立ててきた東郷氏だが、二島先行返還論と四島一括返還論をめぐる日本側の足並みの乱れが指摘されたことで、対露外交からはずれたとの見方がある。
 プーチン・ロシア大統領が昨年九月の来日で、平和条約締結後の歯舞、色丹二島の引き渡しを明記した日ソ間の一九五六年宣言の有効性を確認したことをきっかけに、日本側は最近、五六年宣言をめぐる議論をたたき台として段階的に領土問題を打開する可能性を模索してきた。これは、外務省内部での議論を経た現実的なアプローチだったが「歯舞、色丹二島しか戻らず、結果的に国後、択捉を放棄することになりかねない」と外部から批判を招いた。一部全国紙も、二島か四島かの政府側の分裂をことさら強調する論調を切ち出し、外務省首脳部が風圧に屈した形だ。
 昨年末に「対露政策決定に深くかかわるX氏」なる人物が新聞に連載した論評のなかで、「四島全体について白か黒かと言っているだけで島は返ってくるだろうか」との率直な疑問を投げかけているが、ポスト東郷の対露政策が注目される。

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