IBMは、全世界七カ所の研究所でソフトウェア開発を行なっている。その一つである日本の開発研究所の所長を務めるのが、内永ゆか子氏(五四)。日本IBMの三十五人の取締役の中で唯一の女性として、同社三千人の女性社員の頂点に立つ。 東大理学部物理学科を卒業した一九七一年、日本IBMに入社。英語ソフトウェアを日本語に移す技術を確立したことで、技術者としての地位を確たるものにした。そして九五年、同社初の女性取締役に就任。九九年には、科学技術分野で功績を挙げた女性を表彰する「ウィメン・イン・テクノロジー・インターナショナル」に、米国人以外で初めて選ばれて殿堂入りした。「役員になるまでは、あまり女性を意識したことはなかった」と語る内永氏だが、「悔しい思いはした」という。女性であるがために、甘やかされたというのだ。同社では、男女の区別はあまりなかったが、男性社員と女性社員の鍛えられ方はやはり違った。男と女を同じようには怒らないし、女に高いハードルを与えて強くしようという空気はなかったというわけだ。「気が付けば、『ガラスの天井』ならぬ『バンブー・ウォール(竹の壁)』に守られている。叱れば泣くんじゃないか、ヘタなことを言えばセクハラといわれるんじゃないか、と周囲が壁を作ってしまう。その結果、能力に差があるわけじゃないのに、周りの男性とは何となく違う。最終的には、ガラスの天井と同じことになっちゃう」。それが悔しかったという。

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