外務省幹部による外交機密費着服疑惑は底無しの大スキャンダルに発展しそうだ。焦点の松尾克俊氏(昭和三十九年入省のノンキャリア。現在は官房付)に関して、警視庁はこの五年間に複数の銀行口座に総額十五億円近い現金が入金されている事実を掌握しており、一月下旬の懲戒処分前にも横領容疑、あるいは詐欺容疑で立件する見通しだ。 省内では「裏会計の大御所」と呼ばれる松尾氏は、一九九三年に外交機密費を扱う官房要人外国訪問支援室長に就任。それまで各局の“庶務担”と言われる筆頭課の課長補佐が管理する接待費を含む特別予算を一手に処理するようになってから、その余りにも派手な遊びぶりに批判が集まっていた。しかし、局長・審議官以上の同省幹部の多くも、松尾氏から「領収書のいらない経費」を定期的に貰っていたため、誰も表だって松尾批判が出来ないでいた。 深刻なのは、実はこうしたノンキャリアの「裏会計のプロ」が松尾氏以外にも居ることだ。本省内局の課長補佐(三十八年)と在外公館の一等書記官(四十一年)は、松尾氏と共に一部で「三悪人」と呼ばれる存在。特に課長補佐の派手な遊びぶりは松尾氏以上で、外車を乗り回しスーツはアルマーニ、月に四、五回は一流ホテルに泊まって省内に愛人までいるとされる。

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