省庁再編で誕生した厚生労働省。さぞや激しい縄張り争いが演じられていると思いきや、現実は静かなもの。というのも、「旧厚生省の職員は厚生行政、旧労働省の職員は労働行政をそのまま担当しているので、省庁再編前と変わりがあるわけではない」(中堅幹部)からだ。 新省発足に伴う人事交流は、局長クラスでは旧厚生省の児童家庭局と旧労働省の女性局が合併した「雇用均等・児童家庭局」の局長に労働省出身の岩田喜美枝氏が就任、厚生省出身の酒井英幸氏が労働畑の職業能力開発局長になっただけ。課長以下も交流はほとんどなかった。 実は、厚生省側には大規模な人事交流をすべきだとの意見もあった。ところが、厚生行政には医療保険制度の抜本改革をはじめ、かなりキツイ仕事が控えていることから、労働省側が「医師会との交渉など、慣れないことはできない」と言い出し、立ち消えになった。 こうした“住み分け”が可能なのは、今回の省庁再編がポストの数は減らさないことを大前提としているから。「今年採用の職員が中堅どころになる十年後くらいには事情も変わってくるのでは……」(旧厚生省幹部)と、再編効果が表れるにはかなり時間がかかりそうだ。

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