ワシントンの大椅子取りゲーム

執筆者:中林美恵子2001年1月号

 議員会館の廊下に積まれた段ボール箱の山、配線し直されるコンピューターや机……。選挙が終わる度に何度も見てきた光景だが、今年はとりわけ人と荷物の移動規模が大きい。混迷を極めた大統領選挙はようやく終結したものの、首都ワシントンの喧騒は佳境に入ったばかりだ。 我が上院予算委員会は委員長が留任だと分かっていたので、比較的平穏な職場環境であるはずだった。しかし、年末に上司の名前が新聞紙上に躍りだし、閣僚として政権入りかなどと報じられた時には、直属スタッフ一同、背筋がゾッとする思いをしたものだ。廊下ではヒソヒソ話が始まる。自分も一緒にホワイト・ハウスに行けるなら万々歳だが、居残って新しい上司とうまくいかなければ路頭に迷う結果になるかも知れない。結局その上司は二年先の定年を議会で迎えたいという理由で留任したが、若いスタッフたちがあちらこちらへと移動を始めている。 新政権を勝ち取った側の党に属するという事実がこれ程の興奮を招くとは、かつて実感として知ることがなかった。ひょいとテレビをつければ、かつて同僚だったアリ・フライシャーが新大統領の首席報道官として毎日顔を出している。クリスマス前後にかけて新聞にリストアップされたブッシュ政権移行推進スタッフのうち、行政管理予算局の担当者六人中四人までが元の同僚たち。一人の予算委員会スタッフは現職を離れず有給休暇をとって政権移行準備ボランティアをしているところだが、彼女も多分そのまま政権入りするコースを辿りそうだ。

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