自民党の谷垣禎一・元金融再生委員長は、常に「将来の首相候補」と目されてきた。二〇〇一年元日に読売新聞が発表した官僚百人アンケートの結果でも、「二〇一〇年に活躍が予想される政治家」と「二十一世紀中に首相になってほしい政治家」の両部門で、堂々一位に選ばれた。 昨年十一月二十一日未明、森喜朗首相の退陣を求めた加藤絃一・元幹事長の「乱」が腰砕けに終わり、衆院本会議で内閣不信任決議案が否決される直前、都内のホテルに加藤、山崎両派が集まっていた。席上、加藤氏が山崎拓氏と二人だけでも本会議場に行って賛成票を投じると発言した際、谷垣氏が泣きながら、これも涙の加藤氏に詰め寄り、行く手を制してこうなだめた。「あんたが大将なんだから。大将が行くといえば、皆ついて行くんだから」 このシーンはテレビのニュースで繰り返し放映され、世間の期待を集めた「加藤政局」が、とんだ愁嘆場で結末を迎えたことを強く印象づけた。この結果、加藤氏が「ポスト森」ナンバーワンの座を自ら降りただけでなく、加藤氏側近である谷垣氏までもが失ったものは少なくなかった。 まず、加藤氏の決起の時機を知らされず、“暴走”を止められなかったことで、側近としての力量が問われた。また、内閣不信任決議案への対応をめぐっては、ライバルの古賀誠幹事長らが中心となって「堀内・池田グループ」を結成し、将来の宏池会のリーダー候補としての座を窺い始めたこともある。

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