株式時価総額は約二十兆円で国内企業トップクラス。携帯電話は約三千三百万加入で国内市場のシェア約五九%。NTTドコモは、いまや世界を代表する巨大な通信事業者に成長しただけでなく、iモードなどの各種情報サービスや新機能搭載端末など技術面でも世界の携帯電話業界をリードし始めている。立川敬二社長は、「ドコモの技術が不要な携帯電話会社があるならば教えて欲しい」と“勝者”特有の強気な姿勢を全身で発散する。 そもそも、今日のドコモ成長の基盤をつくりあげたのは前社長の大星公二会長だ。「ドコモ中興の祖」と謳われる同氏のしなやかな経営手腕は、会長となった現在でも存在感を失うことなくドコモの戦略を支えている。 その後を引き継いだ立川社長は、IT(情報技術)分野が時代の主役として注目され始めた一九九八年夏、ドコモが東証一部に上場する直前に社長に就任した。強気で個性的な経営スタイルゆえに毀誉褒貶もあるが、大星会長が築いた基盤を発展させただけではなく、iモードを日本型IT革命の代表格に育て上げるなど、ドコモ飛躍の原動力となった。 立川社長は技術畑出身、東大工学部卒業後、一九六二年に日本電信電話公社(現NTT)に入社。NTTアメリカ社長などを経て九七年にNTT副社長からドコモに転身した。技術者でありながら米国て経営学修士(MBA)を取得したキャリアの厚みと視野の広さが、投資家サイドからは「大向こうを意識した強気で機微のあるパフォーマンス」(証券アナリスト)という前向きな評価に結びついている。

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