安直なリストラより「デフラグ経営」を

執筆者:伊藤幸人2001年2月号

 アメリカ経済の急減速が顕在化してきた。 二度にわたる公定歩合の引き下げにもかかわらず、株式市場は好感せず、下降線をたどったままだ。ブッシュ新政権は景気対策として、今後10年で1兆6000億ドルに及ぶ「大型減税案」を議会に提出すると表明、危機感を募らせている。 そんな中、株式時価総額世界最大を誇る総合電機・金融大手のGE(ゼネラル・エレクトリック)が、今後2年間で全従業員の約15%に当たる約7万5000人以上の人員削減を図る可能性があるとの報道が注目を集めている。カリスマ的経営者のジャック・ウェルチ会長が「今年は大型レイオフ(一時帰休)に手をつける」と語ったというのだ。昨年二桁増益を記録するなど業績絶好調のGEがレイオフに踏み切るとあって、アメリカ産業界では「レイオフ旋風」が吹き荒れるのではないかとの懸念が広がっている。 確かにウェルチの果敢な経営への評価は高い。1981年の会長就任以来、大胆なリストラ(事業の再構築)と積極的な買収戦略によって、約20年間で時価総額を130億ドルから5250億ドルの企業に育て上げた手腕は、先頃、英フィナンシャル・タイムズが「企業を生まれ変わらせた20世紀の最も指導的な実業家」と称賛した通りだ。ウェルチは今年末の引退を表明しており、GEの企業価値を高く保ったまま引き継ぎたい思いがあるのだろう。だが、たゆみない企業の自己改革が大切とはいえ、好業績の時にまで従業員を犠牲にする形でのリストラ策を断行するのであれば、その経営哲学についていま一度、検証を試みる必要があろう。

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