専業主婦業と社長業は似ている

執筆者:筑紫みずえ2001年2月号

 職業人生で必要なものの基本は全て専業主婦の時期に学んだ。専業主婦の経験がなかったなら、私には社長業は務まらなかったと思う。主婦は家庭、社長は会社と、経営目的の違いからリーダーシップの在り方は異なるが、マネジメントの基本は同じだ。なぜか主婦も社長も代替可能と思われていないので競争が少なく、専門職としての市場が発達しておらず、流動性が極めて低いところも似ている。専門家としてあちこちの会社経営を任される社長経験者の話を聞くと、家庭経営の専門家として崩壊寸前の家庭の建て直しを請け負う主婦のプロフェッショナルがいてもよいのではないかと思うのだ。 私が社長を務めるグッドバンカーは、企業の環境問題への取り組み具合を競争させて投資を行なうエコファンドを日本で初めて企画した会社である。当社は企業の環境対応度の調査を担当しており、日興證券グループと商品化にこぎつけたエコファンド市場は六カ月で二千億円規模にまで成長した。企画を始めた当初、「株式会社でなければ取引できない」といわれ、種々の事情からやむなく私が社長業を行なうことになった。「私は社長に向いていない」と泣き言を言うと「初めから社長に向いている人はいない」と叱られたが、その昔は「私は主婦に向いていない」と言って姑に叱られたものだ。

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