日本を舞台に英仏食文化対決

執筆者:西川恵2001年2月号

 英国大使館から昼食会の案内が舞い込んだ。「『英国の味は楽しい!』ランチを催したく、ご出席いただければ幸いです」と文面にある。 英公使邸で一月二十六日に催されたこの昼食会、「英国の食事は美味しくない」という不当な先入観を排すべく、英国がこれから日本で大々的に展開する食文化戦略の第一弾だった。ビュッフェ形式のメニューはゴマソール英大使夫人自ら練り、料理は大使公邸の厨房を三十七年間あずかってきた料理長の畠山武光さんが担当した。 マーマイトとオニオンのパイ・スティック チーズとハムのトーストサンド、イングリッシュマスタード風味 シェットランド産スモーク・サーモンのロール、ごま風味 スティルトンチーズときのこのフラン サバの薫製、大根おろし添え、小さなおにぎりと 最後のサバの薫製を使った料理は、英国の食材と日本食のいい相性を示すためのもの。その他は英国の家庭料理だが、これまで日本人にあまり知られておらず、今後、英国が売り込みを図りたいチーズ、魚介類、自然食品といった食材が重点的に使われた。 自然食品のマーマイトはイーストエキスの調味料。ゴマソール大使夫人は「日本人にとっての納豆と同じで、英国の家庭料理には不可欠です」と述べ、参加者の笑いを誘った。英国にチーズは四百五十種類あるというから、その多種多様さを引き合いに国の統治の難しさを嘆いたかのドゴール大統領のフランスに劣らない。

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