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執筆者:伊藤洋一2001年2月号

 デジタル時代の一つの特徴は、私企業の所有であっても、あるネットワークの使用者が著しく増えれば、そのシステムは公共性を帯びるということである。それは経済の発展を強く促進もするし、阻害もする。たとえば今のアメリカだったらAOLが長期間ダウンしたら、同国の経済活動は大きな打撃を被るだろう。 NTTドコモのネットワークも、その種の公共性を帯びつつある。国内最大のオンライン・プロバイダーは「@ニフティ」で契約者数約四三〇万だが、ワイヤレスに目を転じると、NTTドコモは「iモード」を通じて一七〇〇万以上のインターネット・サービス契約者を持つ。だがNTTドコモは、システム上同社の認定する「公式サイト(ホームページ)」を優遇し、その結果「iモード」の利用者が多様な情報を入手し、各種の電子商取引を行う自由は制限されている。「iモード」のシステムは「料金の代行徴収」という電子商取引には極めて優れた、安定したシステムをもっていて、多くの業者が参入を希望している。しかし、今までわずか一三〇〇のサイトが公認されているに過ぎない。あとは“勝手サイト”としてこのネットワークの外周に置かれている。 独占の弊害は明らかだ。一三〇〇では、電子商取引は発展しない。競争促進が第一だが、さもなくば公式サイトの採用において、民間第三者機関の目を通す一方で、それに関わるコストをネットワーク参加者全体が負担するようなシステムを構築すべきだろう。でなければ、「iモード」は簡単なメールを交換するだけの、ポケベルの発展形で終わってしまう。

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