米ブッシュ政権が二月に実施した対イラク空爆で日本側で最もショックを受けたのは、対イラク輸出を十年ぶりに復活させようとしていたトヨタだったようだ。空爆時にトヨタなどの輸出準備を進めていた日本人商社マン二人がバグダッドに滞在していたことが明るみに出ている。 湾岸戦争前、イラク向けの車の輸出で圧倒的なトップのシェアを誇っていたトヨタは対イラク経済制裁を順守したため、制裁を無視した韓国の現代自動車などにイラク市場で大きな遅れを取ってしまった。 政府・自民党が昨年秋から、湾岸戦争で閉鎖した在イラク日本大使館の再開など対イラク制裁緩和の方針を決めたのは、ひとえにトヨタをはじめとする日本の経済界の意向を受けたものだった。 パウエル米国務長官が対イラク制裁の継続を訴え、これが日本の緩和政策にも影響を与えるのは必至で、「日本の動きを黙認してくれたクリントン政権の方がよかった」(大手商社筋)と恨み節も聞かれ始めている。トヨタはイラク駐在の国連向けに車両輸出を行って、すでに実績をつんでいたが、米国の空爆で目立った行動が取りづらくなり、当面、輸出計画を自粛する方針という。

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