欧州発「素材再編」が日本上陸

執筆者:杜耕次2001年3月号

勝ち組の新日鉄、太平洋セメントが飲み込まれる可能性も……「北米、南米での事業協力に合意が得られず、川崎製鉄との交渉は決裂した」。一月二十三日、パリ市内で新日本製鐵との包括提携を発表した欧州鉄鋼最大手ユジノールのフランシス・メアー会長は、直前まで有力なパートナー候補とみられていた川鉄との“破談”について、こう語った。 ほぼ一年間にわたったユジノールとの交渉が頓挫した挙げ句、最も警戒していたライバル・新日鉄に“油揚げ”をさらわれた川鉄の江本寛治社長は、抜け駆け的な両社の提携に対して「信義にもとる」と不快感を露わにした。 江本社長が苛立ちを募らせたのも無理はない。一月末に稼働したトヨタ自動車フランス工場向けの鋼板納入をにらんだ今回のユジノール争奪戦は、新日鉄の独走に待ったをかける絶好のチャンスだったからだ。仮に川鉄が今回の提携をモノにしていれば、「ユジノールと緊密な仏ルノーに接近して、系列下にある日産自動車や韓国サムスン自動車との取引拡大を画策できたはず」と、鉄鋼業界関係者は解説する。NKK・川鉄合併は周回遅れ 実は、海外展開で新日鉄に冷や水を浴びせかけられたのは、これが初めてではない。川鉄は九九年に東国製鋼、昨年末には現代鋼管と立て続けに韓国の鉄鋼メーカーと提携してアジア戦略の布石を打ってきたが、これも昨年八月にまとまった韓国・浦項総合製鉄、新日鉄という世界ランキング(九九年)一位・二位同士の戦略提携によって、一気に霞んでしまった。

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