日韓共催W杯に漂う暗雲

執筆者:松島芳彦2001年3月号

大会公式名称問題だけではない日韓間の火種 日韓が共催するサッカーの二〇〇二年ワールドカップ(W杯)の開幕まで残り一年と二カ月余り。入場券の申し込みが既に始まり、ファンの関心は日に日に高まっている。W杯はテレビ視聴者の数がオリンピックを上回る世界最大のスポーツイベントといわれる。そのアジア開催も初めてなら、複数の国による共催も初めての出来事だ。 とりわけ、日本の植民地支配に苦しみ、今も日本の大衆文化の移入を制限している韓国との共催は、二十一世紀の日本と韓国、あるいは日本と朝鮮半島との新たな関係の礎とならなければ意義は半減する。 ところが、現在のところ日韓の連携は必ずしも順調ではない。もともと、共催は両国が単独開催を激しく争った末の妥協の産物だ。招致合戦の感情的なしこりを克服できていない。ボタンの掛け違いが続いているのである。 さらに、韓国の内政問題や国際サッカー連盟(FIFA)の内紛など政治的な要素も絡んで、混乱に拍車をかけている。顕著となったISLの弱体化 二月十四日の午後六時ごろ。東京・有楽町のW杯日本組織委員会(JAWOC)で待機していたスタッフらは、ハンブルクに派遣していた職員から入った知らせに顔色を失った。国際電話は、翌十五日午前零時を期して始まるはずだったインターネットによる入場券の申し込み受け付けが、ハンブルクの会社に発注したシステムの不備で延期される緊急事態を告げていた。延期の正式発表は、受け付け開始予定のわずか一時間前。JAWOCの遠藤安彦事務総長は「万全の準備をしてきたが……」と苦渋の表情を見せた。

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