金融政策をめぐる日銀と自民党の暗闘

執筆者:須田慎一郎2001年3月号

二月上旬、株価の低迷を背景に「量的緩和」の実施、さらには「日銀法改正」まで現実のものとなろうとしていた。自民党の猛烈な攻勢にさらされた日銀は、公定歩合の引き下げなど機先を制して金融緩和策に転ずる一方で、内部の結束を固めたが――。「日本銀行の現在の金融緩和策は不十分であり、いわゆる『量的緩和』を実施したり、ゼロ金利政策を復活させるべきではないか、といった主張も聞かれます。そこで、今後の金融政策運営について、政策委員会における議論を踏まえ、基本的な考え方を申し述べたいと思います――」 去る三月七日、日本銀行の速水優総裁は、時事通信社が主催する「内外情勢調査会」で講演を行なった。この講演は周囲があらかじめ予想したモノよりかなり踏み込んだ内容になった。「ゼロ金利政策」復帰は微妙 なかでも、市場が最も注目したのは、本稿の冒頭で引用した部分に続く、次のような速水総裁の発言だった。「まず第一にご理解いただきたいことは、日本銀行は、金利の面はもちろん、量の面においても、これまで内外の中央銀行の歴史に例をみないような思い切った金融緩和策を行なっているという事実です。こうした政策運営を背景に、短期金利、長期金利とも、極めて低い水準で推移しています。また、市場に対して極めて潤沢な資金供給を行なっており、日本銀行が直接供給する通貨量を示すマネタリーベースも、後ほどご説明しますように、相当高い伸びを示しています――」

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