1200万人

執筆者:伊藤洋一2001年3月号

 たまには息の長い話もしよう。掲げた数字は、昨年の六月に経済企画庁総合計画局が出した「人口減少下の経済に関する研究会」中間報告書に掲載されている一六〇〇年、つまり関ヶ原の合戦があったころの日本の推計人口である。最新の国勢調査によると、日本の人口は一億二六九一万人で、四百年前の人口はちょうど今の十分の一だったことになる。 江戸時代の最初の百年で人口は二倍以上に増えて三〇〇〇万人に。そこから百二十年間はほとんど人口は増えずに、明治維新の直前が三二〇〇万人。以降、日本の人口は鰻登りで、第二次世界大戦当時は七〇〇〇万人強、一億を越えたのは一九七〇年前後。日本経済は「人口が大きく伸びる」ことを、多くに認識されない前提としたまま高度成長をしてきた。 ある国の潜在成長力は労働投入量、生産性の伸び、投下資本量の三要素で決まる。人口が増えなければ、成長の要素が一つ消える。その労働人口は、今のままだと二〇〇五年から減り始める。増やすには、移民を入れるか、女性や老人、学生が労働市場に参入するしかない。 ただ地球環境から考えれば、あまり人口が増えないのも選択肢である。人口の減少期に備えて、日本はそろそろ常識をひっくり返す時期ではないか。国全体の成長率ではなく、国民一人当たりのGDPをベースに物事を考えたらどうか。ずいぶん世界が違って見えるはずだ。今のように悲観的にならなくて良い。人が少なくなるのだから、「競争」ではなく、「助け合い」が重要なテーマになるはずだ。発想の転換を図るだけで、全く違った日本の姿が見えてくる。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。