変われない銀行の“大罪”

執筆者:高見沢裕史2001年4月号

不良債権の最終処理まで道程は遠い 金融システム不安が再燃し、政府・与党は大手銀行から持合株式を買い上げる「銀行保有株式取得機構」の設立や、銀行に不良債権の最終処理を促す内容を盛り込んだ緊急経済対策を決めた。バブル崩壊から十年。幾度となく「問題先送り」を繰り返し、そのたびに金融システム危機は深刻化した。市場では「公的資金投入も検討するべきだ」との声が出始めているが、もし実現すれば、四度目の公的資金投入となる。「失われた十年」で済むのか、それとも「失われた二十年」になるのか、日本は最後の正念場を迎えている。 三和銀行、東海銀行、東洋信託銀行の三行が統合したUFJグループは三月中旬、二〇〇一年三月期決算の下方修正を発表した。不良債権の最終処理を進め、当初三行合わせて五千八百億円と見込んでいた不良債権処理額を、ほぼ二倍の一兆千二百八十億円に「前倒し処理して赤字決算にする」との内容だった。これに伴い、二〇〇〇年度下期の配当を無配とすると発表した。株式市場はこの発表を好感し、株価は反転、上昇した。市場は「大手銀行が不良債権処理に本腰を入れ始めた」と受け止めたわけだ。 しかし、大手銀行が言う不良債権の「前倒し処理」には釈然としないものがある。前倒し処理が、もし「将来に必要になる処理」だとすれば、それは「前倒し」とは言えないのではないか。貸倒引当金を過剰に積むのであれば、利益を少なく見せかけ、税金や配当を免れようとする詐術に相当しかねない。だが賢明な銀行経営者が、税金・配当免れをするはずはない。金融庁もこれが不要な処理かどうかは問題にしていない。だとすれば「前倒し処理」は通常の処理なのである。つまり、厳格な基準に照らして必要な不良債権処理をしたら、減配になるほど厳しい決算になったということだ。

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