F1ビジネスの熱い舞台裏

執筆者:小西太2001年4月号

十億人の巨大イベントをめぐり、メディア企業と自動車メーカーの主導権争いが激化[ロンドン発]三月四日、自動車レースの最高峰、フォーミュラ・ワン(F1)がオーストラリアで開幕した。その熱闘の裏、世界で延べ十億人が見る巨大イベントの利権を巡りメディア企業と自動車メーカーが激しく衝突している。主役は二〇〇二年と二〇〇六年のサッカー・ワールドカップ放映権をさらって一躍有名になった独メディア大手のキルヒと、ダイムラークライスラー、フィアットなどの自動車メーカー連合。キルヒはデジタル放送時代をにらみF1放映権の独占を狙うが、メーカー側もグローバル時代に「最強の広告塔」となるF1の主導権奪回に燃えている。「F1に参加するすべての自動車メーカーの名において、新たなチャンピオンシップを創設する準備がある」。四月四日、欧州自動車工業会の会長でもあるフィアットのカンタレーラ会長はキルヒに強烈な牽制球を投げつけた。ダイムラークライスラーのメルセデス部門を統括するフベルト取締役も「キルヒによる支配はF1の終わりを意味する」と敵愾心を剥き出しにした。欧州メディアは「F1分裂の危機」と書き立てた。背後に「黒幕三人衆」の影

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