米国「京都議定書つぶし」の深謀

執筆者:真木啓2001年4月号

狙いは排出権ビジネスにおける主導権確保 米国政府が三月末、地球温暖化防止の枠組みを定めた「京都議定書」から離脱する方針を表明した。エネルギー業界を有力支持基盤とするブッシュ米大統領はかねてから環境保護に消極的と見られており、新聞報道では「地球環境保全に冷淡なブッシュ政権の姿勢を反映した方向転換」との論調が多い。 しかし、こうした見方は的外れだ。欧米諸国は巨額の利益をもたらす「二酸化炭素(CO2)排出権ビジネス」でいち早く主導権を握ろうと動いており、「市場原理をテコにした環境対策」がグローバル・スタンダードになりつつある。米政府の決断はこの動きに逆行するものではない。むしろ「排出権ビジネスや環境外交で主導権を握るには議定書から離脱した方が得策」という判断があったと見るべきだろう。 米政府の“議定書離脱”は、昨年十一月にオランダのハーグで開かれた気候変動枠組み条約第六回締約国会議(地球温暖化防止ハーグ会議、COP6)の時点で十分に予想されていた。「サン・オブ・キョート・プロトコル(京都議定書の息子)を早急に検討すべきだ」。米国の政府や産業界の代表者らはハーグ会議で、異口同音にこんな言葉を主張し始めていたからだ。

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