米・新国防戦略を過小評価するなかれ

執筆者:伊藤幸人2001年5月号

 スタートから4カ月、ブッシュ新政権はいよいよ国防・安全保障戦略の全面的な見直し・転換に乗り出そうとしている。 口火を切る形になったのは、ブッシュ大統領が5月1日に米国防大学で行なった演説である。この中でブッシュ氏は、これまでの「恐怖の均衡」による核抑止戦略と決別し、NMD(米本土ミサイル防衛)とTMD(戦域ミサイル防衛)を一体化させたようなミサイル防衛体制の構築と、核兵器の一方的な削減の実行という核戦略の大転換を提唱した。アメリカの「仮想敵国」はもはやロシア(旧ソ連)ではなく、小国かもしれないが、核兵器や生物化学兵器、及びそれらを搭載できる長距離ミサイルを保持し、アメリカとその同盟国の安全を脅かすような「無責任国家」であると、「仮想敵国」の対象を変えた点が、ブッシュ演説の画期的なところといえよう。 5月25日には「21世紀の国防戦略」に関する新たな大統領演説が予定されており、米紙が伝えるところによれば、アメリカが冷戦後の基本戦略にしてきた「二正面戦略」の放棄を宣言すると見られる。中東と朝鮮半島の二地域で同時に紛争が起こった時にも即時対応できる十分な兵力を維持するという戦略だったが、今後は一地域の紛争に迅速に対応できればよしとする態勢に転換し、その分、兵力を削減するという。

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