プーチン「実利主義外交」の内実

執筆者:桜井薫2001年5月号

対米関係の停滞は不可避で、欧州・日本との関係改善を模索[モスクワ発]今年四月、モスクワで開かれた「国際宇宙会議」は主催国のロシアにとって、さんざんな結果に終わった。世界の百カ国以上が参加したものの、閣僚級を送り込んだ国はモンゴルぐらい。米国は結局、一人も代表者を派遣してこなかった。 ソ連の宇宙飛行士ユーリー・ガガーリンが世界で初めて宇宙飛行に成功したのは、ちょうど四十年前の一九六一年四月十二日だった。プーチン大統領は「先人の偉業」をロシアの国際的地位の向上に役立てようと、昨年九月の国連ミレニアム・サミットの演説で「国際宇宙会議」を主催したいと提言。開催時期も初の有人宇宙飛行から四十周年にあたる今年四月に開きたいと提唱していた。それだけにプーチン政権は、改めて“ロシアの国際的地位”の低下を実感させられたことだろう。 国際宇宙会議だけではない。今年一月、米共和党のブッシュ政権が誕生すると、のっけから国家改革の成否は「ロシア自身の責任」(パウエル国務長官)と突き放され、事実上、対ロ融資はしないと通告された。プーチン大統領は早期の米ロ首脳会談を実現しようと、三月には側近中の側近であるイワノフ安全保障会議書記(当時、現国防相)を訪米させたが、米政権からは全く相手にされなかった。その直後、米政権は米国駐在の五十人ものロシア外交官をスパイ容疑で国外退去させると一方的に通告し、ロシア側を慌てさせた。

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