北朝鮮の金正日総書記の長男「金正男」氏が偽造旅券で不法入国しようとした事件の背景には、同総書記の後継者問題をめぐって二男一派が長男の追い落としを狙った陰謀が絡んでいるとの説が流れている。 北朝鮮情勢に詳しい在京外交筋によると、二男である異母弟の金正哲氏は、今年一月の金総書記訪中に正男氏が同行したことから、来年二月の総書記還暦の際には兄が後継者に指名されるのが確実になったとの危機感を抱いた。正哲氏が形勢を一気に逆転させる絶好のチャンスと見たのが、今回の正男氏の外遊で、欧州連合(EU)代表団が平壌を訪問中に兄一行の不正入国を日本で公にさせれば、金総書記にとって大きな恥辱となり、兄を後継者にする構想が白紙に戻ると考えたと、同筋は指摘する。「金正男」一行がシンガポールから成田に向かうとの情報は英国の情報機関の対外情報部(MI6)から日本当局にもたらされたとされるが、実はMI6に最初に情報を提供したのは正哲派の北朝鮮政府関係者だという。 また、正哲氏の母である高英姫氏は元在日朝鮮人で、同氏から、日本側に意図的に情報がリークされた可能性もあるようだ。

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