金正日総書記の長男で、「ディズニーランド見物」を果たせず強制出国となった金正男氏は、すでに数年前から後継者としての地位を与えられていたようだ。北朝鮮では一九九六年、国家保衛部(秘密警察)と社会安全部(一般警察)で事件が起き、粛清があった。そして新たに両部を統括する保衛司令部が設けられ、事実上の責任者として正男氏が送り込まれた。「北朝鮮は秘密警察でもっている国であり、後継レースはここで決着がついていた」(情報筋)。九五年以降、正男氏は繰り返し日本に不法入国しており、各国情報機関の間では以前から「有名人」だった。同じ偽造旅券を何度も使用し、生年月日は正確に記入するなど、情報機関に敢えて挑戦的な態度を取っていたふしすらある。 それが今回、一転して身柄拘束となった背景には、四月十五日の故金日成誕生日に合わせて訪朝した朝鮮総連幹部に対し、正式に後継者としてのお披露目があったことが影響している。加えて正男氏は「対北強硬路線を唱える米ブッシュ政権を甘く見過ぎた。米側は日本入国の情報は英MI6が掴んだというが、背後で糸を引いていたのはCIAなのでは」(情報筋)との見方もある。

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