昨年ドイツ政界を揺るがせたコール氏の首相在任時の不正政治献金疑惑は去る三月、検察当局が過料の支払いを条件に背任容疑の捜査を打ち切り、決着したかにみられていたが、同氏をめぐる新たな疑惑が再燃する可能性が出てきた。 ドイツ検察当局筋によれば、コール前首相がかつて自らが党首を務めていたキリスト教民主同盟(CDU)の部下に指示して大手電機メーカー、シーメンスからヤミ献金を受け取り、隠し持っていたのではないかとの疑いがこのほど浮上した。 発端は、CDUの元会計責任者が四月、自分が保管していたという政治資金百万マルクを党会計に返還した事実が判明したこと。CDU幹部は「スイスの銀行にあった党の裏口座を約十年前に解約した時、この元会計責任者が自分の口座に保管していたが、最近になって党会計に返還したもの」と説明した。 ところがCDUの元党員が「この金はスイスでシーメンスからヤミ献金として受け取った百万マルクだ」としたうえで、「すべてコール氏の指示によるもの」と“爆弾発言”。コール氏は今のところ、「記憶にない」と平静な様子だが、事実ならその心中は穏やかではあるまい。

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