台湾の李登輝前総統来日で中国が取った対抗措置は、党対外連絡部の戴秉国部長の来日を取り消した程度で、ほとんど実害なく終了した。その後、全国人民代表大会常務委員長(国会議長)である李鵬氏の来日延期が発表されたが、「延期」であり「キャンセル」ではなかった。 わが国のマスコミが懸念していた陳健駐日大使の召還すらなかった。陳健氏はほぼ任期を終えており、その気になれば召還は可能だったはず。同大使は二度も記者会見を開いて「李登輝の政治目的は明らか。(来日が実現すれば)中日関係の政治的基礎を失う」と声を荒らげ、福田康夫官房長官に面会を求めて「中国政府の訓令として森首相に伝達して欲しい」などとビザ発給に圧力をかけた姿は記憶に新しい。 だが、結局は大山鳴動してネズミ一匹。一旦ビザが発給されてしまえば、何事もなかったかのように静かになった。これが中国人特有のやり方である。威嚇の声に驚き、怯んでは中国側の思う壼なのだ。「ダメで元々」の民族性であり、敵を欺く手練手管を無数に抱える国だ。中国人の口を極めた騒ぎの背後に何があるのか、きちんと見通せる眼力を日本人は養っておく必要がある。

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