米国の景気軟着陸の成否を大きく左右する中南米経済の動揺[サンパウロ発]南北米大陸やカリブ海諸国の首脳らが、カナダのケベックで米州自由貿易地域(FTAA)の二〇〇五年末までの発効などで合意した米州首脳会議の閉幕から一夜明けた四月二十三日、中南米諸国の各株式、外国為替市場を「アルゼンチン・ショック」が襲った。二十二日深夜、同国のカバロ経済財政相が突然、二日後に迫った国債の入札を中止すると発表。これがアルゼンチンの債務支払い能力が限界に達しているとの印象を与え、市場の混乱につながったのだ。ブラジルの通貨レアルは対ドル相場で最安値を更新し、九八年にロシアが震源となって新興国に伝播した経済危機でも南米経済の動揺の影響をほとんど受けなかったメキシコですら、通貨、株とも大きく下落した。 北米、中南米地域の諸国が経済統合の深化を約束し合った会合の直後に、一国の変調が地域経済全体を揺さぶるという、統合の負の側面を見せ付けられる皮肉な結果となった。中南米諸国が過去十年以内に経験したメキシコ通貨危機(九四年末)、ブラジル通貨危機(九九年初頭)と比べれば、今回のアルゼンチンの「危機」はまだ傷口が浅いと言える。短期の外国資本が一斉に逃避し、パニック状態の最中に通貨切り下げに追い込まれた前者の二例に対し、アルゼンチンの場合は金融当局者が財政再建案などを提示して市場を沈静化させるという「シーソーゲーム」で何とかしのいでいる。

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