インドを潤す「IT頭脳環流」

執筆者:サリル・トリパシー2001年5月号

“流出”したはずのエンジニアが有形無形の恩恵を母国に……[ムンバイ発]カリフォルニア州オークランドの自宅で、インターネットをブラウズしていたニメシュ・ヴァイアスは、とあるサイトに目をとめた。タイトルは、“return2india.com”。クリックしてみると、現れたのは、海外からインドに戻ったインド人たちの体験談だった。彼らは外国生活の不便を訴え、一方で慣れ親しんだ環境で仕事をすることの喜びを綴っていた。 折しも、ヴァイアス自身、帰国を考えていたところだった。共にインド工科大学で学び、アメリカに渡った友人たちは、今ではインドIT産業の中心地であるバンガロールとアメリカを頻繁に往復しながら仕事をしている。というのも、アメリカから、ウィプロ、インフォシス、サットヤムといったインドのソフトウェア会社に外注する仕事が大量にあるためだ。そしてインド企業の側も、米企業で実務経験のあるエンジニアを必要としている。 ネットの世界で「B2B」といえば、通常は「企業対企業(business to business)」。だが、インド人の間では、「ボストンからバンガロールへ(Boston to Bangalore)」を意味する言葉になっている。

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