危険水域に入る日銀資産の劣化

執筆者:2001年5月号

その先に待つのは「円暴落」という悪夢か―― ゴールデンウィークの合間の金融市場で、ちょっとした椿事が発生していた。五月二日のことである。日銀はこの日、手形買いオペ、短期国債現先買いオペを実施した。三月十九日に発表したリザーブ・ターゲット方式に基づく資金供給オペの一環だった。リザーブ・ターゲットとは、従来、四兆円程度だった日銀当座預金残高を一兆円上乗せし五兆円程度とする、金融の量的緩和策だ。 日銀は民間金融機関から手形や国債を買い取るとともに、金融機関が手にした資金を日銀当座預金に振り込む。日銀当座預金は金融機関が預金の払い出しなどに備えて資金を積み立てておく(リザーブ)場所だが、その残高(「量」)が増えれば金融機関には企業への貸し出しなどにも余裕ができるはず。日本の構造改革に必要な資金を供給する「決意を示した」(速水優総裁)という一策だ。そのための資金供給オペだったが、応札額が予定額に満たない「札割れ」に終わったのである。「予想された事態だったとはいえ、オペレーションとして無残な結果」と大手銀行の資金ディーラーは日銀に同情を寄せる。大手銀行合併や大型連休間近という事情の下で、四月の金融市場では旺盛な資金調達があったが、その特殊要因は五月に入って連休が折り返し点を迎えたなかで消えかけていた。要するに「資金ニーズの乏しい日常」(都銀資金セクション)が市場に舞い戻ってきつつあった。

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