就職は人生の「ゴール」ではない

執筆者:尾方僚2001年5月号

「君の五年後について語ってくださいと言われても、何と答えていいかわからないんです」。よくこんな質問を受ける。「あなたが何をしたいのか、どう生きていきたいのか考えてごらん」と言うと、「考えてもどうせ実現しない」「やりたいことがないんです」という答が返ってくる。 大学生へのビジネス指導を始めて三年目、年々その傾向は強くなってきている。就職はビジネスの入り口に過ぎず、ビジネスマンとしての基礎があれば内定をとることなど当たり前というのが私の指導方針だ。だからスクール名も「就職」といった言葉をいっさい使っていない。まず自分で考える、それもこれからビジネスマンになる訓練なのだ。しかし、今の学生はマニュアル世代。常に模範回答を求めてくる。もちろん「本人のやりたいこと」に模範回答などあろうはずもない。 採用担当者が集まると必ずといっていいほど、「なんで最近の学生はみんな冷めているんだろう」という話がでる。「内定をだしてもうれしそうな顔もしない」という声もきかれるほどだ。一緒になって「まったくね」といいながらも、ふと彼ら彼女らに責任を転嫁しているのかもしれないと考える。そうしてしまった我々オトナにも責任の一端はあるのではないか。彼ら彼女らは、物心ついたころから不況の風が吹き荒れ、よかった時代をまったく経験していない世代なのだから。

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