田中眞紀子外相と外務省幹部のバトルは、最早のっぴきならないところに来てしまった。 小泉純一郎“改革断行”内閣の看板として、機密費問題に改めてメスを入れて省改革に着手し、野中広務元幹事長―古賀誠前幹事長ラインの鈴木宗男前総務局長が画策した北方領土の二島先行返還を軌道修正――。これが当初の田中氏の目的にみえたが、人事凍結をめぐる省幹部との小競り合いの最中、アーミテージ米国務副長官との会談をキャンセルし、この判断が田中氏に対する空気を一変させた。 それでも小泉首相は、党五役に対して「任命権者だから俺が最後に責任をとる」と擁護し、党内にも七月の参院選までは内閣の目玉である田中氏を代えるわけにはいかないとの声は根強い。しかし、野党側は「外交日程を私用でキャンセルするのはゴルフと同じ。外相としての資質を疑う」(菅直人民主党幹事長)と厳しく追及。当然外務省も勢いづいており、簡単に手打ちという状況ではない。 ただし、六月の日米首脳会談、七月のジェノバ・サミットなど重要な外交日程も続くうえ、首相の外交手腕は未知数。気の早い永田町は外相交代も視野に入れている。まず名前が挙がるのは、組閣当初に外務省が望んだ高村正彦元外相、森喜朗前首相の圧力で組閣から外された加藤紘一元幹事長だ。高村氏は無難だが、改革イメージは弱い。対する加藤氏は田中氏に代わる看板かもしれないが、昨年十一月の騒ぎの記憶は生々しい。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。