日本版リート「視界不良の発進」

執筆者:仲野陽太郎2001年5月号

土地流動化の切り札と期待されていたのに、なぜ立ち上げが遅れているのか 戦後初のデフレ不況脱出のための一策と目されてきた不動産投資信託(日本版リート)の先行きに不透明感が漂い始めている。投信販売第一号の座を巡り、激しい先陣争いを続けていた三井不動産、三菱地所の財閥系大手不動産会社の動きが停止、慎重姿勢を強め始めたことに加え、興味を示していた他の不動産会社や金融機関も様子見に転じつつある。 地価の下落と、長引く不況で投資対象となるオフィスビルの収益性に翳りが出始めていることが背景にあり、「不確かな金融商品の投入で企業イメージを損なわない方が得策」との判断に傾くところも出始めた。米国では十兆円超の巨大市場に成長したとあって鳴り物入りで開幕した日本版リートだが、早くも迷走の様相を呈し始めている。「適正評価」が分からない「投資家の心理に悪い影響を与えなければいいけれど……」。四月、大阪市の抵当証券管理会社「大和都市管財」に近畿財務局が会社整理を通告、経営破綻したニュースを聞いた大手不動産会社の幹部は、表情を曇らせこうつぶやいた。同幹部は、社内で日本版リート立ち上げの最高責任者。不動産投信と何の縁もない抵当証券会社の破綻に、同じ一般投資家向けの金融商品というだけで敏感に反応するこの担当者の不安は、業界全体の雰囲気を如実に物語っている。

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