巨大企業を動かし始めたNGO

執筆者:小西太2001年6月号

ネットを駆使した組織力と資金力で、グローバル企業と対等に渡り合う勢力にまで成長[ロンドン発]非政府組織(NGO)が巨大企業を動かし始めた。欧米の有力NGOは、インターネットを駆使した多国籍企業顔負けの組織力と千億円単位の資金力を武器に、先進国政府ですら管理し切れないグローバル企業と対等に渡り合っている。九九年に米シアトルで開かれたWTO閣僚会議では、「反グローバリズム」を叫ぶNGOの過激な活動が注目を集めたが、もはやそれはプラカードを担いで騒ぐだけの活動家ではない。 地球規模で利潤の最大化に邁進するグローバル企業と、人道や環境の理念を掲げて企業の抑止力にならんとするNGO。東西冷戦の終結から十年、国家の後退で企業と市場の独壇場になった世界に、NGOが新たな勢力として台頭してきている。巨大製薬企業をターゲットに 五月中旬、世界有数の製薬会社であるスイスのノバルティスは、白血病治療薬のグリーベックを「米国の低所得者層に無料提供する」と発表した。国民皆保険制度のない米国で、個人ベースの保険に加入できない低所得者層はグリーベックのような高価な新薬に手が出ない。ノバルティスの決定は多くの貧しい白血病患者を救うことになる。

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