パレスチナ自治政府のアラファト議長の指導力が急激に衰えているとの説がささやかれている。カイロの外交筋によれば、アラファト議長の出身母体であるパレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハ内で、議長方針に従わないケースが今春以降、急増しているという。 端的な例が、先ごろファタハの四十代の幹部数人が中心になってガザで新たな反イスラエル秘密武装組織を結成したこと。同組織にはイスラム原理主義組織、ハマスやイスラム聖戦の若手幹部も多数加わっており、組織的な対イスラエル武力抗争を展開、度重なるアラファト議長の中止命令にも耳を貸そうとしないという。 六月初めにテルアビブで起きた自爆テロは表向きはイスラム聖戦の犯行とされているが、実はこの反イスラエル秘密組織が背後で糸を引いていた可能性が強い。 出身母体のファタハすら掌握できないとあって、イスラム勢力各派への影響力も減退が目立ち、米政府内でも「パウエル国務長官らを中心に中東和平を実現するのにアラファト議長の指導力にもはや頼るべきでないとの意見が台頭してきた」(ワシントンの消息筋)といわれる。

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