自治体破綻「再生十年の物語」

執筆者:足立紀尚2001年6月号

福島県赤池町が実践したシンプルな財政構造改革 このところ、全国の地方自治体の危機的な財政状況が囁かれている。そうしたなか、九州の筑豊地方にある小さな町がにわかに脚光を浴びている。 福岡県赤池町。ここは、つい先ごろまで自治体関係者の間で、日本で唯一の「財政再建団体」として知られる存在だった。財政再建団体とは、財政破綻した自治体として認定され、国の指導のもと財政再建を進める自治体のことを言う。九二年二月に指定を受けた赤池町は十年目にあたる今年三月に財政再建を成し遂げ、この秋には再建団体からはずれる見込みだ。どのような経緯で赤池町は再建団体に転落し、またどのようにして財政再建を果たすことができたのだろうか――。炭鉱閉鎖の救済策が…… 筑豊地方は戦前から多く炭鉱が集まり、石炭の掘り出しで活況を呈した。赤池町の場合も、ピーク時には年間五十三万トンの石炭を産出し、炭鉱労働者の数だけで三千八百人を数えていた。町を支える唯一の基幹産業が炭鉱業だった。石油がエネルギーの主軸にとって代わる戦後に入ってからは、どの炭鉱でも徐々に石炭の産出量を減らし、やがて閉山を迎えた。赤池町内にあった二つの炭鉱も、昭和四十五年には完全閉鎖のやむなきに至っている。

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