松下は日立との提携を進めたが、今後のカギを握るのは東芝の動向「ソニーはチャンピオンであり、松下はチャレンジャー」――。五月二十三日、東京・赤坂のホテルニューオータニで庄山悦彦日立製作所社長とともに提携記者会見に臨んだ中村邦夫松下電器産業社長は、独特の淡々とした口調でソニーと松下の力関係をこう表現した。一見、謙遜めいた言い回しながら、日立との家電事業包括提携を契機に、ソニー追い落としを宣言したことにほかならない。 提携内容にはソニーへの強い対抗意識がにじみ出ている。その第一弾にあげたICカードソリューションビジネス。消費者がICカードを携帯して買い物をしたり、金融決済をしたりする環境をつくりあげるビジネスだ。すでにソニーが今年一月に、トヨタ自動車や三井住友銀行など産業、金融界の有力大手を巻き込んで共同出資会社を設立し、独自開発の非接触型のICカードを使ったビジネスを立ち上げている。松下・日立の提携第一弾は、ソニーのビジネスモデルに真っ向からぶつかるのだ。 家電開発では、新しいインターネットプロトコル(IP)アドレスである「IPv6」を導入した情報家電の商品化に共同で取り組む。IPv6はすべての家電製品にインターネットアドレスを持たせることが可能で、すべての家電製品がネットワークでつながる。これも、今年三月末の経営方針発表でIPv6対応家電開発を表明したソニーが先行している領域だ。松下・日立はさらに、情報家電の心臓部といえるシステムLSIをはじめとする半導体の共同開発をも視野に入れている。

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