昨年一月、東証二部上場の昭栄に敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けた通産省OB、村上世彰氏。株主価値向上を謳い、自ら率いる「M&Aコンサルティング(M&AC)」の関連会社を用いて、昭栄の「筆頭株主かそれ以上の大株主になる」と宣言したTOBは不発に終わった。だが、同氏の投じた「株主主義」という一石が日本の企業経営の根幹を揺さぶったのは記憶に新しい。 ところが、市場関係者の様々な憶測を呼んできた村上氏のM&ACは、なぜか「企業買収路線」を放棄してしまったようなのである。同社は昨年九月に投資顧問業として登録、今年三月には投資一任業務の認可を取得した。そう、事実上の「投資信託会社」に衣替えしてしまっているのだ。 もちろん「株主主義」の思想は残されている。同社のビジネスの仕組みは投資事業組合(ファンド)を創設し、資産を運用するというもの。ファンド案内書によると、投資対象企業は「経営陣または大株主に対し、M&ACとして交渉(余地も含む)できる関係がある」とある。要は、投資対象企業の経営陣が改善要求項目を聞き入れそうか、それを通じて株主価値向上を図れるかということだ。

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