通商権益の確保と国内農業の保護――。この二点を理解しなければ、中国がとったセーフガードに対する報復措置の背景は見えてこない。[北京発]日中に貿易戦争の暗雲が垂れ込めている。四月二十三日に日本政府が暫定発動したネギなど中国産農産物三品目に対する一般セーフガード(緊急輸入制限措置)は、中国政府が二カ月後の六月二十二日から自動車など日本製の工業製品三品目に報復的な一〇〇%の特別関税を導入したことで、にわかに緊迫した事態となった。七月三日には打開の糸口を探る局長レベルの政府間協議が北京で開かれたものの、双方の主張は平行線のままに終った。セーフガードの即時撤回を頑なに迫る中国政府の真意はどこにあるのか。そこには譲るに譲れない中国の国内事情と対日戦略が見え隠れしている。なぜ中国は強硬なのか「ここまで中国に言われるものかと思ってしまった」。七月はじめ、二日間のセーフガード協議にかかわった日本の通商当局者は北京からの帰国後に、こう感想を語っている。 日本側は首席代表の田中均・外務省経済局長はじめ外務、経済産業、農林水産、財務の各省から二十六人の代表団を北京に送り込んだ。中国側の首席代表を務めた女性官僚、郭莉・対外貿易経済合作部対外貿易管理司長(局長)は「参加人数の多さから双方がいかに協議を重視しているかが分かる。双方の努力によってよい結果が得られると思う」と、なごやかに協議の口火を切った。

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