一九九八年の核実験で核保有国となったパキスタンで、核兵器開発陣の内紛が深刻化している。技術支援国である北朝鮮と中国との関係も微妙に絡まって事態はいっそう複雑化している。 軍事政権を率いるムシャラフ大統領は今年三月、同国の核兵器の父とされるカーン博士をカーン調査研究所のトップから解任。同時にパキスタン原子力エネルギー委員会のアフメド委員長も更迭した。 両者は核実験成功への貢献度などをめぐり激しい非難の応酬を繰り返していたため、大統領の措置は「けんか両成敗」と受け止められた。だが、二人の対立はその後も続き、同国のトップ技術者たちを二分しかねない状況になっている。 カーン博士の研究所が開発した中距離ミサイル「ガウリ」は北朝鮮の技術支援を受けている。一方、アフメド委員長の原子力エネルギー委員会が開発したミサイル「シャヒーン」は中国の技術が土台とされる。ムシャラフ大統領は、二人の確執が北朝鮮派と中国派の科学者抗争に発展する事態を警戒し、新たに設立した「国家科学技術委員会」の下に科学者を統合する計画を練っているという。

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