国際組織「インソル」が定める企業整理の原則が注目されている。厳格な「日本版インソル」が作られるのか――。「これで債権放棄という選択肢は事実上なくなった」――。全国銀行協会と経団連が中心に取りまとめを進めている「私的整理に関するガイドライン」の中間報告を見た大手銀行の融資審査担当幹部はこう呟いた。 六月末に発表された中間報告は「企業の再建手法は民事再生法や会社更生法といった法的整理が本来の姿」との見解を明記。私的整理である債権放棄は、法的整理では事業価値が著しく毀損し、再建に支障が生じる恐れがある場合に限られる例外的な措置と位置付けた。その上で、債権放棄を行なう場合の条件として、経営者の退任や株主責任の明確化を原則に定め、再建計画については三年間をめどに実質債務超過を解消、三年で経常黒字化を図るといった数値目標が設けられている。弁護士、公認会計士などによる再建計画の調査・評価も盛り込むという、予想以上に厳しい内容となったのである。 九八年から二〇〇〇年にかけて、熊谷組、ハザマ、長谷工コーポレーション、青木建設など準大手・中堅クラスの経営不振ゼネコンを中心に債権放棄が相次いだが、再建計画の期間はいずれも長期に及ぶ。ハザマは五年と比較的短いが、熊谷組は十二年、青木建設は二十年という長期の計画。経営者責任や株主責任が曖昧なまま債権放棄が行なわれたケースもあり、今回示された条件の下では、これまでの債権放棄のほとんどは不適となってしまう。

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