吉野さんの人間発掘の旅

執筆者:藤原作弥2001年7月号

『Foresight』創刊編集長の伊藤幸人氏に代った寺島哲也新編集長から、あいさつ代わりに(?)書評エッセイの依頼を受けたのは、ちょうど『永井荷風と河上肇――放蕩と反逆のクロニクル』(吉野俊彦著、NHK出版)を読み始めた時のことだ。 振り返ると、今から十九年ほど前、伊藤・寺島両氏は『新潮45+』(現『新潮45』)の編集担当で、私は創刊企画の相談に与り、書評コラムを毎月執筆していた。 新編集長の寺島氏は、「いい仕事をしている人はよく本を読んでいると感じる。雑誌を引き継ぐにあたって、その一号目にブックレビューをやりたい。『活字文化の教養こそ基本』」と言う。その言やよし。 特集企画は『考えるビジネスマンのための、夏の一冊』とのこと。そこで、すぐさま、前掲の『永井荷風と河上肇』を採り上げることで応諾したのだが、「二冊」でも構わないという。そこで、すぐさま『「斷腸亭」の経済学――荷風文学の収支決算』(吉野俊彦著、NHK出版)を追加した。 前置きが長くなったが、この二冊は、〈活字文化の教養こそ基本〉の見本のような本である。二冊そろって推すのは、姉妹篇のように正・続の関係にあるからだが、二冊合わせると千頁の大冊、読みごたえもある筈だ。

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