私の女房は、結婚以来、ほとんど私と一緒に暮らしていない。宇宙飛行の訓練のためにアメリカに出かけてばかりいる。で、一人残された私は、よく質問される。「そんな結婚生活によく耐えられますねぇ。特別な秘訣でもあるんですか? それとも奥さんの尻に敷かれて文句も言えないわけ?」 声を大にして言っておくが、私は女房の尻に敷かれてなんかいない(まぁ、敷かれても構わないけど)。何か特別な秘訣があるのかというと、それもない。“なんとなく”、こういう結婚生活が続いているとしか言いようがない。でも、この“なんとなく”が私のキーワードなのかもしれない。 私の女房は想像を絶するほど行動的な女だ。ところが、そんな女を結婚相手に選んだ私は想像を絶するほど非行動的な男。出来るだけ旅行しない、外食しない、映画館に行かない……。何が楽しくて人生を送ってるんだと不思議がられるが、私は人生が楽しくてしょうがない。子供の頃からの唯一の趣味さえ続けられれば、それだけで大満足なのだ。それは、読書。 私という人間が形作られる上で、親の教育や学校教育も何かしらの影響を与えているとは思う。でも、最大の影響を与えたのは読書だとしか思えない。子供の頃から本ばかり読んでいる私には、自然と体に染みついた強烈な人生観がある――世の中、何でもあり。だって、読書を通じて、ホントに多種多様な生き様や考え方があることを教えられてきたから(人間というものの驚くべき多様性を読書以外の方法で心から理解するのは不可能だと私は思っている)。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。