建築から見る「理想の学校」

執筆者:2001年8月号

「教育の場」から「生活」の場へと変貌する学校 それは建築にも顕著に現れている 大阪教育大学附属池田小学校の児童殺傷事件はまだ記憶に生々しいが、現場の校舎を見ると、古いスタイルの校舎で、一直線の片側廊下に沿って、同じ大きさの教室が並ぶ、いわゆる“ハーモニカ方式”の校舎であった。 全国の学校数は、小中学校あわせて約四万校にのぼるが、その八割を超える校舎は池田小学校と同じ“ハーモニカ方式”の校舎である。しかも、そのほとんどが昭和四十年代から五十年代の児童生徒数急増期に大量に建設された。このことが学習環境の画一化をもたらし、全国どこにいっても同じような校舎が見られる理由なのである。 しかし、近年はこの画一型を脱したユニークな校舎が誕生している。新しいタイプの校舎では、教室と廊下を隔てる壁を取り払い「オープンスペース」と呼ばれる多目的空間を教室に隣接させ、常時教師が子どもたちの近くにいるようにと「教師コーナー」がつくられている。学校の中心には広い「多目的ホール」。また学年のみんなが一緒に食事をとることのできる家庭的な雰囲気の「ランチルーム」も設けられている。周囲に塀のない校舎もある。 これら新しいタイプの校舎がつくられる背景にあるものは、教育の多様化の流れだ。今求められる学校教育は、ゆとりの中で、生きる力を育むこと。そして子どもたち一人ひとりの個性や自主性を大事にして、これを伸ばす教育。来年度からは新たな教育課程が実施され、完全学校週五日制も始まる。時代はこの数年で大きく変わり、学校も教え込むだけの「教育の場」から生きる力を育む「生活の場」へと変わりつつあるのだ。では、写真にあるユニークな建築をみていこう。

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