ブランドイメージ「維持と創造」の現場から膨れ上がる「買い付けビジネス」「アー・ユー・ジャパニーズ?」――パリ一番の目抜き通り、シャンゼリゼ大通り。日本人女性が歩いていれば付近でこんな声をかけられることは日常茶飯事だ。 同地区内には五百メートルあまりを隔てて高級皮革・衣料ブランド「ルイ・ヴィトン」のブティック三店が店を構える。赤茶色をした同ブティックの紙袋を手に、英語で話しかけるのはアジア人のグループ。同社の商品カタログを手に「一人一品限りと言われ家族向けにお土産が買えなかった」と切り出す。「代わりに買ってくれないか。日本人は顔だから買えるでしょう」。代金相当の現金数千フランを片手に頼み込む彼らに、とまどいながらも引き受ける日本人は少なくない。店から出てきたところで商品を受け渡し、いくらかのお礼を受け取る。 肩代わりショッピングの交渉は常に路上で、多額の現金を介して行なわれる。もちろん目的は「家族のためのお土産」などではない。買われていったブランド商品は、日本を含むアジアへの並行輸入や、解体されて偽造品の製作に使われたりする。 同店前には平日でも数十人単位の長蛇の列が出来る。パリの地図を片手に、憧れのルイ・ヴィトン本店に辿り着いたはいいが、早朝の開店時でもなければ、外で立ったまま待たされるのが普通だ。付近の高級ブティック街サントノーレ通りやモンテーニュ通りで買いそろえた「エルメス」「シャネル」など有名高級ブランドの買い物袋を歩きにくいほどかかえた日本人観光客の姿は、すでに風景の一つになっている。

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